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『吸音』を究めた『消音』の行方 その3

前回の『サイレント・ボックス』は、フレームは木製でしたが、経年変化でひび割れ、ねじれが発生、
とても「商品」とは呼べないものであることが、分かってきました。
これまで、段ボール、アルミパイプなどで、試作を重ねてきましたが、いずれも「商品」と呼べるレベルには、たどり着けませんでした。
それならば、原点に返って、既製のパーティションを使わせてもらって、ということになりました。

今回の試作は、「聴かれてはいけない、相談ルーム」というコンセプトで、中に簡単なテーブルとイスが4脚くらい置けるスペースを持った、『消音パーティション』という名称で、生興(株)さまのローパーティション、LPXを使わせていただき、完成させることができました。
161108 5 錦糸町・セイコー祭り
上記の写真は、東京での展示会に出品した『消音パーティション・ルーム』です。

性能は、下記のように、スキ間が多くあるはずの正面ドア側でさえ、100-59=41dB、低減という
信じられないような数値になりました。
消音パーティション H2.2-161108

四面とも、D-40レベル、というスバらしい性能になりました。
体感された人、すべての人が、「何だこれ、全然聴えない!」と、驚いていました。

ともかく、これは『商品』として、売って行けるレベルのものに、なったのかな、と感じています。
さあ、これから。
これを基に、『音楽室』の応用など、いろいろ前が見えてきました。

音・環境事業のパートナー:『生興(株)』(パーティション部材の供給、消音商品の販売)

音・環境事業のパートナー:『コマツアートデザイン(株)』(消音商品の製作、特殊「音」工事の施工)

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『吸音』を究めた、『消音』の行方 その2

「『吸音』を究めた『消音』」の続きです。

前回の『ワンワン・ボックス』、たまたまボックスの中に、頭を突っ込んだところ、扉を開けたままなのに、ほとんど周囲の音が消え、とても静かであることが、分かりました。
いわば『無音』に近い状態でした。

これで自信が付いていたところで、ある大手パーティション・メーカーから、ご紹介があり、去年『サイレント・ボックス』なるものを、造ることになりました。
150918 4s-1280
上の写真が、その『サイレント・ボックス』です。

その『消音性能』は下のグラフのようです。
141120 2M BOX 第1世代 測定 消音性能s-1280
ドアがありません。
これが最新の、Ver.4 になります。
ドアがないのに、この性能。
『遮音性能』と呼ぶより、『消音性能』だろうと思い、そう呼んでいます。

実際には、周囲がいくらうるさくても、中は静か。
それよりも、無音に近い状態になるので、音が消えていて、不思議な感覚になります。
中で、携帯電話をしていても、スッキリ、ハッキリ会話ができました。

恐らく、これだけの消音性能を持っているボックスは、他にないでしょう。
今、弱点になっている、200Hzの消音を、もっと性能を上げようと、壁パネルの中身の変更を企んでいるところです。
200Hzを良く『吸音』する材料・仕様は、見付けております。
今後も、ドンドン進化させて行くつもりです。
乞うご期待!

音・環境事業のパートナー:『コマツアートデザイン(株)』(消音商品の製作、特殊「音」工事の施工)

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『吸音』を究めた、『消音』の行方 その1

今現在、進行中の『音』の開発プロジェクトを、支障のない範囲で、ボツボツとご紹介していこうかな、と思います。

その第1回は、『吸音』を究めた『消音』について、書いてみます。
原理は簡単「音エネルギーを吸収してしまえば、静かになる」ということ。

今から8年前、あるパーティション・メーカーと一緒に、『吸音をメインにした、静かな応接室』を目指したことがありました。

これに至る要因として、
①パーティション工法では、スキ間が必ず多くできる。
②使用する材料、仕上げ材は、鋼板・アルミなどの反射材・遮音材ばかりで、
 室内の音エネルギーが多くなりすぎる。
など、パーティションは、およそ防音に向かない代物、工法である、と考えられていました。

しかし、パーティション工法の利点は多く、
①工期が短い。
②工事が簡単。
③コストが掛からない。
④移設が簡単。
などたくさんあり、市場ではほとんどがパーティション工法による、室空間造りになっています。

しかし、『防音』には向かない。
そこで考えたのが「『吸音』による、静かな空間」造りでした。

結果から言ってしまうと、500Hz以上の中・高音は、30dB以上、低減=消音できましたが、それ以下のの低い音、特に125Hzの落ち込みが激しく、10dB台の消音しかできませんでした。

その一番の原因は、吸音材がウールだけだったこと。
もちろん、グラス・ウールよりも性能がよい、ロック・ウールを使っても、でした。

それでも、中・高音域で30dBも消音できたことは成果で、人の聴感覚で言えば、1/8に聴える、というレベルでした。

とりあえず商品化、という話しになりましたが、経営者の鶴の一声で、中止になりました。
とても、残念でした。
ただ、その時の経験から、それ以上のものにするプランを、ずーっと育んできました。

その後、ある人からの相談で、「ワンちゃんの家はどうだろう?」という話しが出てきて、早速試作することとなりました。
それで、できあがったものが下記の写真です。
             《ワンワン・ボックス》
ワンワン・ボックス
室内は、吸気・排気装置も付け、ワンちゃんの快適さも考慮しました。
性能はなかなかのもので、D-35レベル、
250Hzで、26dB
500Hzで、40dB
1000Hzで、50dB
という性能でした。
もちろん、中のワンちゃんの声は、ほとんど聴えませんでした。
ただ、あまり需要はありませんでしたが・・・

音・環境事業のパートナー:『コマツアートデザイン(株)』(消音商品の製作、特殊「音」工事の施工)

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騒音調査について

最近、騒音調査について、お問い合わせが増えております。
『騒音調査』と言っても、その種類・内容によって、調査方法、準備などが違います。
それで、一応整理して、お知らせしておいた方が良いと思い、まとめてみます。

◆騒音調査の方法

ボクの調査の方法は、
①『問題の音』の特定
先ずは、『問題の音』が存在するのか?
存在するのなら、その『問題の音』の周波数、音量を明確にします。

②『問題の音』の発生源の探索
どこから伝わっているのか?
『空気伝搬』、『固体伝搬』どちらなのか?

③『問題の音』の対策を考える
相手が明確な場合、どう交渉したらよいか?
どうしようもない場合であれば、どう防音するか?
と、進めて行きます。

◇マンション騒音の場合

建物に由来する、ポンプの音・ダクトの音・エレベーターの音など、騒音源がすぐに探索できるものであれば、上記の方法で、対策、進め方を出せます。

しかしマンション騒音の場合、主に上下階の騒音で、発生源、発生する時間は、不特定です。
この場合、先ずお願いしているのは、
①騒音が伝搬してくる方向・場所を明確にする。
②その音が発生する、日時を記録していただく。
ということです。

騒音調査で一番困るのは、「深夜から早朝」と言われる場合です。
自動車で移動できるところであれば、何とか対応できますが、電車などの交通機関がありません。
それにもう一つ、もし早朝に終了した場合、結局その日は、他に仕事ができません。準備も含めて、丸2日が、必要になります。
それでボクは、『夜は9時まで、朝は6時から』というのを基本としています。

◇低周波騒音の場合

『低周波騒音』の場合、上記『騒音調査の方法』の①『問題の音』の特定が異なります。
それは、個人差があって、『聴える人』と『聴えない人』、『気になる人』と『気にならない人』の違いがあって、そこから始めます。

それが違えば、第三者に対する対応策、防音をする対策は、変わってきます。
それはもう、Case-by-caseでしか、進められません。
絶対という方法はありません。
ここにいつも、苦慮しています。

◇費用について

私は以上の仕事を、基本的に1回あたり30,000円で、やっております。交通費、消費税は別になります。交通費は、片道1,000円以内の所であれば、 『込み』にしております。
ただ一口に騒音調査と言っても、実際は様々です。測定に掛かる時間・密度、報告書の内容・量などによって、その都度お見積もりをしております。
特殊な調査の場合は、別途お見積しております。

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ながらく、ご無沙汰しました

実は、この投稿の仕方が分からず、初めての投稿になります。

これからは時々、忘れられないよう、せっせと投稿します。

よろしくお願い申し上げます。

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マンションの固体伝搬音(騒音)の対策

防音業者の中には、「マンションの騒音は、上階からしかあり得ない」とか、「下階から壁を伝わって騒音が上階まで届くことはない」などと、明言する者がいます。
それは間違いです。

ブログにも上げましたが、以前あるマンションで、実験をしたことがあります。
隣接する階・室で、『カカト歩き音』を出してもらい、ある1室でその音を測定する、と言う実験です。
その結果、音が大きかった順は、下記のようになりました。
(1) 直上階の室
(2) 直上階の、もう一つ上の階の室
(3) 直上階の、もう一つ上の階の隣室
(4) 同じ階の隣室
(5) 直上階の、2戸隣の室
(6) 直下階の隣室

一番大きな音だったのは、直上階の室だったのは、確かですが、次に大きい音だったのは、もう一つ上の階の室でした。

その理由は、伝搬経路の影響が、大きいと考えます。
マンションの『カカト歩き音』は、床からコンクリートに伝わり、『固体伝搬』して行きます。
コンクリートの固体伝搬速度は、空気の約15倍、と言われています。
空気の15倍も、コンクリートはよく音を伝えていきます。
『空気伝搬』では、届かないと思われるところにも、音は伝わっています。

その大きさは、
(1) 距離による減衰
(2) 『固体振動』から、『空気振動』に変わりやすいかどうか?
という要素によって、決まってきています。

(2)については、
◇GL壁
◇天井裏の空気層
◇二重床の空気層
などにより、共振共鳴を起こしやすい周波数の音が、増幅して、大きな音になっていきます。
その3カ所の防音対策が、必要になってくることになります。
要するに、『固体伝搬』対策が必要になってきます。

もうひとつ、『カカト歩き音』は、『重量衝撃音』であるのに、マンションの管理規約などは、『軽量衝撃音』対策の『LL-40』の規定になっています。
ここに、なかなか解決が進まない、大きな問題があります。

『天井防音』は、東日本地震以来、天井スラブ(コンクリート)にアンカー・ボルトを打てなくなり、重い防音材が使えなくなりました。そのために、『天井防音』をするためには、柱を立て、梁を通し、それに天井を設けるというような方法しか、採用できなくなりました。
つまり、かなりコストが掛かってしまう、ということになりました。

コストと手間から言えば、もっと簡単に防音ができる方法は、『上階に緩衝材を敷く』という方法になります。最も安く、簡単に、効果の高い方法です。

壁・床については、その周波数・音量・伝搬経路により、対策プランが立てられます。
それによっては、簡易的なDIY防音でも対処可能な場合があります。

ご相談いただければ、先ずは騒音調査、その結果を基に、防音対策プランを作成いたします。

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